加齢などの原因により視力に重要な網膜の中心部分である「黄斑」に出血などの異常が生じ、進行すると著しく視力が障害される病気です。欧米では成人失明原因の第1位で、日本でも患者数が推定70万人と増加しています。病気のタイプとして、滲出型(ウェット型)、萎縮型(ドライ型)があり、主に治療の対象となるのは滲出型と呼ばれるタイプです。滲出型加齢黄斑変性の場合、光干渉断層計(OCT)を用いた簡便な検査で網膜剥離(網膜がうき上がる)、網膜浮腫(むくみ)、新生血管(異常な血管)などが見つかります。
初期には物がゆがんで見える変視症で始まり、進行すると著しく視力が低下します。比較的視力の良いうちに治療することが重要で、早期に発見することが大切です。
誰にでもできる簡単な自己診断チェックシートがあります。図1を普段読書するくらいの距離で見てください。視力検査のように、片眼を手で隠し、開いているほうの眼でシートの中心にある黒い点を見てみましょう。
すべての線が真っすぐに見えるかを確認してみてください。図2のように波打って見えたり黒っぽく見えるところはありませんか? また、マス目が欠けて見えないところはないでしょうか。読書などに重要な神経が集中している黄斑に異常があると、物が歪んで見えるなどの症状が起こりますが、普通に両眼で生活している中では気づきにくいものです。一度チェックしてみましょう。
眼の中に抗VEGF抗体という薬物を注射し、血管からの水漏れや新生血管の成長を抑えることで病気の勢いを鎮静化させます。画期的な薬剤で、視力がある程度良いうちに行えば視力向上も期待できますが、病気が進行してしまってからでは病気の勢いを食い止めることが出来ても視力の回復は望みにくくなります。薬の効き具合を診ていきながら、治療開始時にはひと月に1回程度のペースで注射をおこない、その後は薬の効き具合を診ていきながら状態に応じて追加の注射を検討します。
VEGF(血管内皮増殖因子)とは主に血管内皮細胞に作用し、血管からの水漏れや新生血管の成長を活性化させる物質で、加齢黄斑変性をはじめとして糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症など種々の病態形成に広く関与する物質で、眼科領域における治療標的分子の代表と言えます。
新生血管の発生部位が黄斑の中心から離れている場合、レーザー光で新生血管を焼き固める治療も選択肢の一つです。
「ビスダイン」という光に反応する薬剤を静脈に注射した後、弱い光線を眼底に照射することで活性酸素が発生し、新生血管を退縮させます。正常な網膜に傷をつけることなく視力の低下が抑えられる治療法です。治療後はしばらく日光に当たれなくなります。この治療の導入は入院で行うのが望ましいため当院では行っておりませんので、大学病院などを紹介させて頂きます。