眼の表面を覆う角膜上皮、結膜上皮、そして涙液を一つのユニットとして「オキュラーサーフェス」と総称しますが、ドライアイはこのオキュラーサーフェスの慢性疾患の代表です。「様々な要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり、眼不快感や視機能異常を伴う」病気です。正常なオキュラーサーフェスを維持するために必要な条件は涙の量、質および分布で、そのうちどれかが異常だと乾燥感やゴロつきといったドライアイとしての自覚症状が出現します。
従来、ドライアイに対する薬物治療では、涙に近い成分をもつ人工涙液と角結膜上皮障害治療薬(ヒアルロン酸ナトリウム)の2種類でした。特に女性の方には馴染みがあるかと思われますが、ヒアルロン酸には粘性があり、水分を保つ効果があります。また、涙や点眼液を目の表面に長く保持できることから、角膜の傷の修復にもつながります。
一方、最近明らかになった涙液中のムチン(たんぱく質)が欠乏しているタイプのドライアイに対しては上記の治療のみではなかなか症状の改善は得にくく、ムチンと涙液の分泌を促進し、質・量の両面から涙液の状態を改善するという新しい作用を持つドライアイ治療点眼薬(ジクアホスルナトリウム)が期待されています。
また、これらの点眼治療でも症状が改善しにくい場合は、涙の排出口の部分に栓をして涙の流出を塞ぎ、涙が目の表面にとどまるような治療(涙点プラグなど)を行うこともあります。
涙は、涙腺から分泌され、眼の表面を覆ったのち涙の排出路である涙道(上下の涙点→涙小管→涙嚢→鼻涙管→鼻腔)を通って喉の奥へと流れていきます。
流涙症とは何らかの刺激によって過剰に涙液が分泌されるか(分泌性流涙症)、涙の排出が十分に行われないことによって(閉塞性流涙症)、眼のうるみが続く状態あるいは涙があふれる症状のことをいいます。
分泌性流涙症の原因は、眼に異物や迷入した場合や、結膜炎、コンタクト装用者に多い角膜のキズ、などさまざまです。これらに対しては、例えば結膜炎に対しては抗生物質の点眼など、原因に対する治療を行います。
一方、閉塞性流涙症をもたらす代表的な病気には鼻涙管狭窄、鼻涙管閉塞、涙嚢炎、新生児涙嚢炎などがあります。検査では、鼻涙管通水検査が重要です。涙道の狭窄や閉塞が認められる場合は涙道を拡張したり、涙道を確保するための鼻涙管チューブ挿入術などが必要になります。